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インタビュー

スペシャルインタビューVol.2

2025年6月4日

《特別対談》 まつのき会×JDA

日本歯科医学振興機構(JDA)が主催する認定講習会は、同じ医療法人から複数回にわたって受講をいただくケースが多いことが特徴の一つです。

『なぜ繰り返し受講するのか?』

茨城県古河市に拠点を置く医療法人社団まつのき会の方々に、その理由や認定取得後の変化などについてお話を伺ってまいりました。



JDA:

ではこれよりインタビューを始めさせていただきます。

私は日本歯科医学振興機構の理事を務めます溝口と申します。本日のインタビュアーを務めさせていただきます。

まずは自己紹介からお願いいたします。

 

小松:

医療法人社団まつのき会理事長の小松と申します。 2019年に開業をさせていただきまして今年で6年目になります。本日同席の3名は、立ち上げ当初から支えてくれているメンバーであり、私と想いや方向性を共有してくれているメンバーでもあります。最初はユニット3台からスタートしたんですが、4台になり5台になり、気づけば9台になり、多くのスタッフに支えられてここまで大きくなりました。

JDAさんの講習会は初期の頃から注目しておりまして、年々診させていただく患者様が増えていく中で、自院の歯科衛生士にもっと歯周治療に専念してもらいたいと考え受講することにしました。歯科衛生士による麻酔の臨床導入も順調に進んでいまして、その後複数会場に渡って第2陣、第3陣と受けさせていただいています。


小松理事長
小松理事長

JDA:

現在2つの歯科医院を運営されていらっしゃいますが、総勢で何名いらっしゃるんですか?

 

小松:

歯科医師が13名、歯科衛生士が18名、歯科助手が15名ほどだったと思います。事務員なども含めると、総勢60名ほどになります。

 

JDA:

その中でJDAの講習会を受講されたのは何名くらいですか?

 

小松:

私たち4名と、あと10名くらいは受講済みだったと思います。今後も継続的に受講させたいと考えています。院内にはすでにJDAさんの認定取得を目指している歯科衛生士も複数おりますので。

 



横田:

歯科衛生士の横田と申します。歯科衛生士歴は9年目です。約4年前に当法人に入職しまして、いろんなことに携わらせていただいています。JDAさんの認定は3年前に取得させていただきました。


横田さん
横田さん

高嶋:

歯科衛生士の高嶋と申します。歯科衛生士歴は30…(ごにょごにょ)

 

全員:

(笑)

 

高嶋:

こちらの法人でお世話になってから、インプラントや歯周治療など様々なことを経験させていただき、とても楽しく自分のやりたいことをできているなという実感があります。3年前に「麻酔ができるようになる資格があるよ」みたいな感じでお話をいただいて講習会を受講しまして。実際に麻酔を行うときはすごくドキドキしたんですけど、限られたアポの中で歯科医師を待たず麻酔ができるというのはやはり効率がよく、患者様にとってもメリットが大きいので、講習会を受講してよかったと思っています。


高嶋さん
高嶋さん

JDA:

横田さんと高嶋さんは同じタイミングでご受講されたんですか?

 

横田:

はい、4名とも梅田スカイビル(大阪会場)で受講しました。

 


根本:

本院であるまつのき歯科クリニックの院長を務めます根本と申します。私は正確には2019年の立ち上げメンバーではないんですが、小松理事長の意欲的な姿勢や経営手法に興味があって、スタートして半年後に仲間入りをさせてもらい今に至ります。比較的初期のメンバーでして、ユニット3台の頃から理事長と二人三脚で歯科医院を大きくしてきました。2019年からスタートし、現在のカルテナンバーは9,000番台です。もう少しで10,000番というところでして、地域の方々に信頼していただき、地域の歯科医療に微力ながら貢献できていると感じます。

ご存知の通り保険治療は時間が限られていて、その限られた時間の中でたくさんの人数をこなさなきゃいけないっていう側面もあるので、歯科衛生士に麻酔をお願いできることはすごく助かっています。講習会の内容がすごく良くて、麻酔の作用機序や薬剤の種類を学ぶだけではなく、緊急時の対応なども実習を通して体系的に学べたことで、当院の歯科衛生士も自信をもって麻酔に取り組むことができたのではないかと思います。最初は私たち歯科医師がうしろについて細かな指導を行っておりましたが、最近は指示を的確に判断し能動的に動けるようになりましたので麻酔処置を任せています。経験豊かな歯科衛生士はラポールの作り方も上手いし、第三者機関の認定を受けているというのも後押しして、臨床導入はスムーズでしたね。患者様への説明も上手いので、患者様からクレームをいただいたことは一度もありません。むしろ、「今日は先生が麻酔するんですか?」と患者様に嫌な顔をされてしまうくらいです(笑)

歯科衛生士だからこそ実践できる質の高い麻酔処置というのがあるのを目の当たりにしていますし、麻酔の資格が取れるから当院を選んだというモチベーションの高い歯科衛生士も多くおりますので、私たち歯科医師が逆に刺激をもらっています。


根本院長
根本院長

JDA:

皆様、自己紹介ありがとうございました。

カルテは分院と合算してもうすぐ10,000番ですか?

 

小松:

いえ、本院のみです。4年ちょっとで到達しますね。ユニット3台からスタートした頃を思い出すと、感慨深いものがあります。

 

JDA:

素晴らしいですね。地域の方々から信頼されていることがよく分かります。

さて、歯科衛生士による麻酔の臨床導入についてですが、「患者様の理解をどう得ればいいのか?」という点はよく議題に挙がります。貴院はすでに患者様の理解を十分に得ている状態かと思いますが、歯科衛生士のおふたりが具体的に工夫していることは何かありますか?

 


横田:

特別なことではないんですが、説明を丁寧に行っています。スケーリングなどで同じ患者様と何度もお話をしますので、安心して私に任せてもらえるように説明を尽くすようにしています。信頼関係が重要ですね。

 

高嶋:

私も基本的には同じです。勉強をしっかりとして、認定も取得していますと患者様にお伝えするのも効果的ですね。認定を取得しているという事実は、患者様の安心感につながると感じます。院内に掲示している認定証も患者様はよく見ていらっしゃって、これも安心感につながっていると思います。

 

根本:

患者様に何か言われたことが本当に一度もないんですよね。

幸か不幸かコロナの時期があり十分なトレーニングの期間も設けられましたし、看護師が行う点滴や採血を例に出してお話しすると患者様は理解しやすいようです。患者様から「痛くなかったよ」というお声をいただく度に歯科衛生士たちは自信を増し、自信をもって説明できるからこそ患者様の理解をより得やすいという好循環が生まれています。私たち歯科医師は、最初の臨床導入のときだけちょっとフォローしたような感じですね。

 

小松:

でも、看護師の例とか、根本先生が前段階で患者様にお話をしているというのは大きいかもしれないですね。歯科医師という立場だからこそ出せる説得力みたいなものがあると思いますし。

 

JDA:

歯科衛生士による麻酔の臨床導入を目指す他の歯科医院様にとっても非常に参考になるお話だと思います。

 

小松:

何回かスケーリングしたり、TBIもちゃんとやりますので、その中で会話の回数が増えればラポールも作りやすいですね。

その後SRPとなった場合、そこまでの経緯がしっかりとしていれば、歯科衛生士による麻酔を患者様はすんなり受け入れてくれるような気がします。SRPも一気に全部やるわけではなくて、ワンブロックで区切って行うので、1ヶ所目で痛くない麻酔ができれば、患者様は安心して「次もお願いします」となりやすいですね。根本先生もおっしゃっていましたが、むしろ私よりも歯科衛生士に麻酔をしてもらいたいと希望される患者様が多く、歯科衛生士による麻酔というのはいずれ歯科業界のスタンダードになってくるのではないかと感じています。

当院には1日100名ほどの患者様が来院されておりますが、歯科衛生士による麻酔を臨床導入して約3年、トラブルは一度も起こっておりません。不安な面もあるかもしれませんが、自院の歯科衛生士を信じて、もっとチャレンジさせてあげてもいいんじゃないかと思います。

 

JDA:

私たちの活動の真意もそこにあります。歯科衛生士にできることというのは、法律をきちんと読み解くことさえできれば無限に広がっていきます。でも実際は、大半の方が法律の解釈を誤っていて、歯科衛生士という仕事自体の幅を狭めてしまっているんです。そのせいで、歯科衛生士の仕事に魅力を感じられず辞めてしまう人もいます。麻酔をきっかけに、自分のできることを広げてもらって、もっと歯科衛生士としての人生を楽しんでもらいたい。素晴らしい仕事の対価としてもっと収入を上げてもらいたい。そのために私たちはこの活動を行っているという側面がありますので、貴院の歯科衛生士おふたりにもさらに自分の可能性を広げていっていただきたいなと思います。

 

小松:

方向性は私も同じかなと思います。坂元先生の講義で、医師と看護師が協力してその地位を勝ち取ってきた歴史の解説がありましたが、それがすごく印象に残っています。「法律では、医師と看護師、歯科医師と歯科衛生士の関係性は同じような建付けになっているのに、歯科業界は大きな後れを取ってしまった。歯科衛生士は本来もっと可能性のある仕事だ。」というお話に合点がいき、前向きに歯科衛生士による麻酔の臨床導入をしようとしたら、結果いろんなことが上手くいった気がします。

患者様が効率的に回る。効率的に回るから、当然収益が上がる。収益が上がれば、スタッフにしっかりと還元できる。スタッフのモチベーションも上がるし、患者様からの評判も上がる。活き活きと働く当院のスタッフを見て、「私もあんな風になりたい」「認定取得を目指したい」といった人材が集まってくる。いいサイクルが回り、ありがたいことに当院では人材採用の悩みがありません。人材採用にお困りの先生は、参考にしていただくといいかもしれません。



JDA:

ではここでメインテーマのお話に移りたいと思います。

『なぜ繰り返し受講するのか?』この点について皆様のご意見を伺います。

例えば、受講済みの皆様が院内に情報を落とし込めば、当機構の講習会を繰り返し受講せずともスタッフ教育を施すことは可能だろうと思います。ですが、貴院では第2陣、第3陣と繰り返し受講いただいています。お金と時間をかけて、講習会にスタッフを送り出すのはなぜでしょうか?

 

根本:

確かに院内で教育すれば効率的なのかもしれませんが、やはり目的意識をもって講習会を受講し、きちんとしたトレーニングプログラムを受けて、試験に合格して認定証をもらうというのが重要なのではないかと思います。実際に受講して感じましたが、あの品質のトレーニングを私たちが院内でできるかと言われたら間違いなくできません。それに、第三者機関から発行された認定証を持っているということは個人の自信にもなりますし、社会へのアピールにもなると思います。それがいいんじゃないでしょうか。

 

小松:

JDAさんの認定を取ったスタッフは、制服と名札を変えているんです。彼女たち2名は管理職ですので黒色の制服なのですが、臨床歯科麻酔認定歯科衛生士の資格を取得した歯科衛生士の制服は早稲田大学のようなえんじ色に変わります。資格取ったら早稲田大学だよ、みたいな(笑)

その後、臨床歯科麻酔認定歯科衛生士という資格名が入った名札がプレゼントされるので、受講のモチベーションになっているのではないかなと思います。甲子園のどこどこのチームのユニフォームがカッコいいよねとか、この高校の制服が可愛いから入学を志望するとか、そういう観点を応用して院内の仕組みづくりをするのも結構重要だと思っています。



高嶋:

歯科衛生士が麻酔できるなんて、今までは考えもしませんでした。ですので、「麻酔ができるようになる講習会があるよ」というお話をいただいて、純粋に受講してみたいと思いました。法律の話は目から鱗でもちろん得るものが多かったのですが、歯科医院という環境で必要となる救急蘇生の具体的な方法を実地で学ぶことも、きっとこの講習会を受けていなかったら経験できる機会もなかったのだろうなと感じます。新たな発見が多く、受講してよかったと心から思います。

 

JDA:

歯科関連法令の講義は、この講習会の根幹をなしています。歯科衛生士法の成り立ちや歴史、その意義を学んだからこそ、緊急時対応の重要性を自分事として考えられるようになるというところはありますね。

 

小松:

「自分事として考えられるようになる」というのはこの講習会を積極的に受講する一つの大きな理由のような気がします。麻酔を行う上で、ただその手技を理解していればいいというわけではなく、緊急時の対応もできないといけないわけですが、実際にその場面に遭遇したことのないスタッフはなかなか自分事として捉えることが難しく、いざというときに何もできないということはよくある話なのかもしれません。そういったことを含めて、自分の仕事を真剣に見つめなおし、様々なことを自分事として考えられるようになってくれるのは、経営者としては非常に嬉しいことですし、お金と時間をかけてでも繰り返し受講する理由になるのではないかと思います。

あと、単純に外に出て勉強するのは楽しいですから。普段は診療室にこもりっきりなので、希望するスタッフには積極的に外に出て勉強する機会を与えています。前日にはみんなでワイワイ飲んで、観光もして、そして翌日はしっかりと勉強して。メリハリをつけることで、勉強が楽しいと思えるようにしています。お酒や観光が目当てでもいいんです。それをきっかけに学ぶ機会が増え、自らを高めてくれれば、それが臨床の質にも反映されて、結果的に患者様のためになります。自院の評価にもつながりますし、経営的に必要なコストですね。

仕事もプライベートも全力で楽しんでもらって、スタッフには活き活きとした人生を歩んでもらいたいです。スタッフの目がね、最近輝いているのがよく分かるんです。JDAさんの講習会を受講することは、そういうのにつながっていると思うので、自前で麻酔に関する教育システムを作ることもできなくはないですけど、やろうとは思わないですね。

 

JDA:

おふたりは、JDAの講習会は楽しかったですか?

 

横田・高嶋:

(互いの様子をうかがいながら)た、楽しかったです!

 

小松:

なんか言わされている感じじゃない?おかしいな、ミシュラン一つ星のお店にまで連れていったのに(笑)

 

横田:

本当に楽しかったですよ。講習会の内容も素晴らしかったですし、特に複数の実習を通じてチームダイナミクスをしっかりと学べたことで、当院の結束力がさらに強まった気がします!

 

小松:

ちなみに、日本全国で講習会を開催しているのは何か意図があるんですか?

 

JDA:

私たちは全国に火種を作りたいと考えています。「麻酔をする・しない」という各論ではなく、「歯科衛生士の可能性とは?」という総論を業界全体で考えていきたい。そのために、センセーショナルな麻酔という話題を切り取って世間に問題提起したという面はありますね。認知されなければそもそも問題提起になりませんので、最初はワンイシューで戦ったという感じです。

運営の効率を考えると、東京と大阪での開催を繰り返すのがベストです。大きい会場が確保しやすく、なおかつ人が集まりやすい場所での開催を繰り返すのが効率的ですね。私たちの疲労軽減という点でも、開催地の固定はメリットが大きいです。

でも、地方からスタッフ大勢を引き連れて受講するのは難しいとか、お子様がいて泊りがけで受講するのは難しいとか、いろんなご事情があるわけじゃないですか。どこで働いていたとしても、どんな環境だとしても、等しくこの講習会を知っていただきたいですし、受講してこの講習会の本質的な部分を自分の目と肌で感じて欲しい。受講をきっかけに自分の中のスイッチが入って、歯科衛生士としての人生が変わる方もきっといるんじゃないかと思うんです。ですので、これからも積極的に地方開催をして、いずれは47都道府県すべてで開催できたらなと思っています。

 

小松:

歯科衛生士人生が変わる。確かにそのくらいインパクトのある講習会でした。予約が取れないのも納得です。

法人向けの開催とかはできないのですか?

 

JDA:

ありがたいことに、早い会場では申し込み開始後1分程で満席になってしまいます。

法人様向けの開催も時々ご要望をいただくのですが、実際のところこれ以上開催回数を増やすのは難しいんです。JDAのボードメンバーは開業医で構成されておりまして、自院の経営もありますので、合計20回の講習会開催を目標に年間スケジュールを組んでいます。ただ、極力大きめな会場を選定するようにしていて、130名定員の会場も多くご用意しておりますので、早めのお申し込みをいただけたら嬉しいです。

 

小松:

分かりました。チケット争奪戦、頑張りますね。そして私は引率がてら飲みに出ます(笑)

 

JDA:

引率に関しては、1会場5名様までという規制はございますが、臨床歯科麻酔管理指導医の資格を持つ歯科医師に限り無料でお受けしております。歯科衛生士の単独受講となると、実習は当機構の講師および他院の歯科医師が監督することになります。スムーズな臨床導入のためには、やはり自院の先生方に見ていただくのが一番いいかと思います。





根本:

小松理事長がおっしゃっていたように、当院にはJDAさんの認定取得を目指して入職してくる歯科衛生士も多くおりますので、今後も継続的に講習会を受講させていただくと思います。引率のシステムはすごくありがたいので、是非活用させていただきたいと思います。

 

小松:

人材採用も含め、当院は歯科衛生士による麻酔の取り組みを積極的に行うことで様々な恩恵を得ていますが、JDAさんの取り組みは歯科衛生士の魅力を底上げし、歯科衛生士になりたい人を増やすような、もっと壮大で崇高なものと感じます。

確か電車の中吊り広告だったかな?「歯科業界を変える」みたいな広告出していたことありますよね?

 

JDA:

中吊り広告ではないんですが、2020年8月にFacebookで広告のようなものを出しました。



小松:

そうそうこれです!これを初めて見たとき、すごく刺さるものがあったのを憶えています。

 

JDA:

Facebookで238名もの方がシェアしてくださいました。賛否両論あることはもちろん想定内で、活動の認知という点で上手くスタートダッシュができたと思っています。

 

小松:

かなり勇気のいる攻め方だったんじゃないですか?

 

JDA:

そうですね。逆風にかなりダメージを受けました(笑)

 

小松:

今は逆風も止んで?

 

JDA:

逆風がまったくないというわけではないんですが、風向きが変わってきたことは感じますね。また、立ち上げ時とは批判の傾向もだいぶ変わってきました。当初は「歯科衛生士による麻酔処置は違法だ」という事実誤認した主張が目立っていたんですが、最近は徐々に情報も整理されてきて、違法性に関する主張をする方は少なくなってきたように思います。

 

小松:

「学校教育に組み込むことが先だ」という主張をよく見かける気がしますがどうですか?

 

JDA:

多いですね。「教育に組み込むべき」という点は私たちも強く同意しますし、推進していくべきだと思います。ただそれが歯科衛生士学校のカリキュラムでなければならない、ということになると疑問が残ります。歯科衛生士学校のカリキュラムであることに固執してしまうと、具体的な実現時期が不明瞭です。ただでさえ、歯科衛生士法が制定されてから76年、私たちは医科業界に大きく後れを取っています。もうこれ以上、法の解釈を誤り、歯科衛生士の可能性を狭めることはあってはならないと思っています。もちろん、歯科衛生士学校に麻酔に関する教育が組み込まれる日を私たちも待ち望んでいますし、並行して目指したい中長期のビジョンと思っています。

 

小松:

私も大学でインプラントは学んでいないし、アライナー矯正だって臨床に出てから学びました。大学で学んでいないから今やっていないかと言われればどちらもやっていますし、学校教育の有無が「できる・できない」を決めるのではなく、結局は日々の研鑽が「できる」を増やしていくということですよね。

 

JDA:

歯科衛生士の土屋和子さんが私たちの活動を応援してくださっているのですが、彼女が歯科衛生士学校に通っていた頃はまだ超音波スケーラーはなかった時代です。学んでないから今使えないかと言われればそうではないですよね。歯科医師にとっても歯科衛生士にとっても、学校教育は一つのプロセスでしかなくて、小松先生のおっしゃるように学び続けることで自分を高めて、できることを増やしていく必要があるのだと思います。

「学校教育に組み込まれているならOK、そうでなければNG」というのは、研鑽義務のある医療の本質から外れていますし、短絡的で危険な考え方だと思います。極論かもしれませんが、授業中ほとんど寝ている学生がいたとして、でも上手に試験対策をして歯科衛生士免許を取得したとします。卒業して、学校のカリキュラムに麻酔の授業が含まれていたから臨床に出て初日から麻酔します、とはまずならない。学校教育だけでは質を担保できないし、技術の保証にもならないということですね。学校教育も含めて、人生を通して知識や技術を積み上げていくしかないのだと思います。

 

根本:

76年の後れを取り戻すために、JDAさんがすごいスピード感で歯科衛生士のために動いてくれているのがよく分かります。私たちもこの流れを後押ししていけるよう、チーム全体で研鑽を積み、地域の歯科医療により貢献していきたいと思います。

 

小松:

根本先生とふたりでスタートしたときから、茨城県古河市で一番になろうと話していたんです。単純な医院規模や患者数ではなく、歯科衛生士が麻酔を行えることもそうですし、治療の質やチームワークの質という点でも古河市で一番は達成できたのではないかなと個人的には思っています。今後はもっと法人を大きく強くして、北関東で一番と言えるくらいになれたらと思いますね。それが達成できたときに、「歯科衛生士による麻酔を臨床導入してから個々がさらに活き活きと働くようになり、自然と法人が大きくなっていった」なんて振り返りができたら最高かなと思います。

 

JDA:

いいご報告が聞ける日を楽しみにしています!

 

小松:

今年もう2医院出して合計4医院になる予定ですので、着実に近づいていますよ。

理事長として法人の方向性は決めますが、基本的には現場のスタッフにすべて任せています。スタッフを信じて任せるというのが一番いいと思うんです。それが組織の土壌としてあるからこそここまで成長してこられたのだと思いますし、スタッフが新しい知識や技術に対して貪欲なのも、「任されている」という意識が責任感や自己肯定感につながっているからではないかと感じています。



JDA:

では最後に、歯科衛生士のおふたりに伺います。これからどんな歯科衛生士になっていきたいですか?

 

高嶋:

患者様に「この人に診てもらえてよかった」と思ってもらえるような歯科衛生士になりたいです。

オープニングからずっと診させていただいていた患者様がいたのですが、その患者様が1年ほどお見えにならない時期がありまして。コロナに罹ってしまって来られなかったそうで、久しぶりにメンテナンスをさせていただきました。その際に、「自宅近くの別の歯科医院にも行ってみたけどダメだったわ。やっぱりあなたにやってもらいたくて戻ってきたわよ。」と言ってくださって、とても嬉しかったことを憶えています。歯科衛生士として、自分の仕事を誇らしく思える瞬間でした。多くの方に「あなたでよかった」と思っていただけるようなサービスを提供し続けられたらと思います。

 

横田:

一つ一つのことを深く追及して、いい形で患者様に還元できる歯科衛生士になりたいです。

法人の拡大とともに、これからどんどん新人のスタッフが入職してくると思いますので、治療やメンテナンスの知識・技術の継承はもちろんのこと、人間としても模範となれる歯科衛生士になれたらと思います。

 

小松:

私は「役職が人を育てる」と考えておりますので、ふたりには全体を見渡せる立場を経験し、歯科衛生士としてのステージをもう一つ上げてほしいと思っています。苦しいことも多いでしょうが、それ以上に楽しいことや大きなやりがいが待っているはず。様々な経験を通じて、医療人としても、そしてひとりの人間としても、ひと回り大きくなれるんじゃないかと思います。大いに期待しています。

 

JDA:

貴院の益々のご発展を願っております。

それではこれでインタビューを終了させていただきます。本日はありがとうございました。



医療法人社団まつのき会

https://matsunoki-dc.com/

 

※このインタビューは2024年7月に行われました。

2025年6月時点で、医療法人社団まつのき会は計4医院、従業員数は93名となっています。


Photographer: Naohiro Horie

Editor: Yuya Mizoguchi


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